• 地学 中1中2野外巡検「フィリピン海プレートの活動と地震・火山」

地学 中1中2野外巡検「フィリピン海プレートの活動と地震・火山」

2018.11.07

  • 理科

理科・地学では、11月1日の創立記念日を利用して、中1中2の希望者対象の野外巡検を実施しました。今回の野外巡検は、「フィリピン海プレートの運動と地震・火山」をテーマとして、神奈川県、静岡県内を以下のようにまわりました。

①国府津・松田断層や箱根火山・富士山などプレート境界の地形を俯瞰
②駒門風穴で富士山の溶岩流によってできた溶岩隧道を観察
③柿田川湧水公園で火山の恵みとしての湧水を見学
④楽寿園で湧水と、三島溶岩を観察
⑤神奈川県温泉地学研究所で地震・火山に関する講義・展示物見学
 
中1・中2は地学の授業でプレートや地震・火山などの学習しており、実際に現地で実物を見て、さらに専門家からの話も聞きながら学習することで、これまでの学びをより深いものにする助けになったのではないかと思います。また、中1・中2は、行事でも丹那断層や箱根火山などを見学していますので、頭の中でこれらとリンクさせて考えることもできたことでしょう。生徒感想とともに写真を掲載します。

①国府津・松田断層や箱根火山・富士山などプレート境界の地形を俯瞰
高い場所から大磯丘陵の西縁を通る国府津-松田断層を見るとともに、箱根火山や富士山を遠望し、形を確かめました。
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写真左手が大磯丘陵です。右手は足柄平野で、酒匂川が流れています。丘陵と平野の間に断層があります。

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富士山と箱根火山を見る生徒たち。

生徒感想
・国府津―松田断層が走っているところの左側がきれいに盛りあがって丘となり、反対側は海に面した平野部となっているところが見られた。これでもかというほどきれいに分かれていて、とても驚いた。
・フィリピン海プレートの作りだした地形等を初めて体験して、身近な地形にも、長い年月がつまっていることが分かりました。プレートや地震など、様々な要因が重なってできたものなんだと、この研修を通して分かり、今まで見てきた数々の地形を、神秘的に感じました。
・特に印象に残ったのは最初の場所で見ることのできた地形です。山に囲まれている場所ということが地図で見るよりもとてもわかりやすく、いまいちイメージができなかった断層の形もわかったような気がしました。

②駒門風穴で富士山の溶岩流によってできた溶岩隧道を観察
およそ1万年前の新富士の玄武岩質溶岩の噴出によりできた溶岩隧道です。溶岩の表面が冷え固まる一方、中央部は流れ下っていった結果できた空洞です。
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国指定天然記念物になっている駒門風穴に入っていく生徒たち。
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駒門風穴の中の様子。内部は夏冬通じて13℃程度で、中に入るとひんやり感じました。

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「肋骨状溶岩」と呼ばれる壁面の構造。
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足元の凹凸は「波状紋」と説明されています。

生徒感想
・特に印象深かったのは、駒門風穴です。普段生活していても、あんなに大きくて迫力のある洞窟はないので(そもそも洞窟がない)とても驚きました。中はヒンヤリしていて、外とはちがう雰囲気がありました。
・風穴には神棚のようなものがあり神が祀られていた。きっと駒門風穴のような自然が作る美しい洞窟に人々は力を感じ、崇拝してきたのだろう。
・駒門風穴では、ガラスのような溶岩や波状紋、そして肋骨状溶岩やガラス質の溶岩に光るコケなど様々な興味をひくものがありました。風穴の奥では岩の表面が黒く光っていてものすごく美しく、この風穴が信仰の対象となるのも納得でした。

③柿田川湧水公園で火山の恵みとしての湧水を見学
約1万年前の富士山の噴火によって流れ出た溶岩は、およそ40㎞の距離を流れ下り、三島市にまで到達しました。この三島溶岩の末端部で、溶岩の隙間をとおってきた雨水や雪解け水が湧き出しています。全長1.2㎞の柿田川は日本一短い一級河川であり、そのすべてが湧水からなります。一日100万m³の湧水量があるとされ、東洋随一の湧水を謳われています。
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柱状節理を利用した水飲み場で、説明役として同行した高3生の話を聞く生徒たち。

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第二展望台のようす。

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青く透き通った清澄な水は見るものの気持ちもすがすがしくさせてくれます。

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高3生を中心に簡単に水質を調べました。また、柿田川湧水をつかった豆腐アイスクリームを食べた生徒もいました。

生徒感想
・池の底から水があふれ出ていて、自然が生み出すパワーに圧倒されました。また、池が光の影響で青く輝いて見えて水が澄んでいました。
・自然に湧き出しているとは思えないほどの量と規模の綺麗な水が湧き出しているのを見ました。富士山の周辺に降り注いだ水が三島溶岩の中を流れて来たと言うことを聞き、火山が与えることは、災害だけではないのだと、改めて感じました。柱状節理や美しい洞窟、様々な地中深くの石などの恩恵は、僕たちの生活に広く影響したと思います。
・柿田川湧水では、湧き水の量がおとめ山や、等々力渓谷などの崖線式湧水とは全く異なり、かなり多いと感じた。 普段のおとめやまでは湧き水が“湧いている感”がないため、柿田川のボコボコ湧いてる様子に興奮した。一方で水質観測が時間の都合で正確な数値が出せなかったので、少し残念だった。phがしおりに掲っているものよりもかなり高く、湧き出してから時間が経っていると考察したが、実際のところどうして高く出たのかが気になった。

④楽寿園で湧水と、三島溶岩を観察
柿田川と同じく三島市にある楽寿園は、三島溶岩流の上部層末端部を見ることができます。小浜池には湧水があり、バイカモという冷水に育つ水草を見ることもできました。
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小浜池の水は枯れていることも多いのですが、この日は湧水に満ちた姿を見ることができました。

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水中の緑色のものがバイカモです。

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三島溶岩を間近に観察することができ、縄状溶岩もしっかり確認できました。

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玄武岩質溶岩は鉄分を多く含むため、紐につるした磁石が引き寄せられました。

生徒感想
・楽寿園で見ることができた縄状溶岩は中一の地学の授業で習ってはいたが、今まで間近で見る機会がなかったので新鮮だった。今回の地学巡検に参加して、普段目にしていた石などを意識してみることによって、今までその不十分であった感覚を覚えることができた他、今まで見たことがなく、忘れかけていた地学分野をさらいなおすことができて、よい経験ができたと思う。
・縄状溶岩は1か所ごとの長さは短かったもののかなり多くの場所で見られ、表面にひだのようなものがあったところが印象的だった。また、小浜池は今まで行った時は水が枯れていたと聞いていたので、かなり多量の水がたまっているのを見られたのは幸運だった。柿田川も小浜池も、どちらも水がとてもきれいな印象を受けた。

⑤神奈川県温泉地学研究所で地震・火山に関する講義・展示物見学
地震や火山、湧水などについてより詳しく知るために、これらを調査・研究し、防災や資源の保全を行われている神奈川県温泉地学研究所を訪れました。研究員の方に解説していただくことができ、生徒の理解も進んだことと思います。

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はじめに研究員の方から研究所で取り組まれていることのご説明がありました。研究所の概要がわかったことはもちろん、地学の授業で学んだ内容もたくさん出てきたり、今回の巡検のテーマのまとめのようなお話もあったりして、生徒たちは興味深そうに聞いていました。

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リアルタイムで示される地震計の記録に見入る生徒。

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展示物の中には実際に使われていた地震計なども置かれており、手に取ってみることができるものもありました。写真の物はボアホールタイプの地震計です。

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プレート境界と考えられる神縄断層を含む地層の剥ぎ取り標本です。逆断層であり、地層が逆転しているそうです。

生徒感想
・地震計が建物とは離れてその一部が埋められ、砂利の上に置かれているということには驚いた。また、神縄断層のような2つの地層の上下が逆転しているものは初めて見たので、とても興味深かった。
・特に僕は神奈川県温泉地学研究所の人からの話が面白かった。従来温泉地ではなかった所に千メートル以上掘削して出来た大深度温泉が出来ているという事を知れた。今回の体験で、実際に見たり触れたりすることでより深く知る事が出来、さらにこれはどうなっているのかと調べたくなった。
・研究員の方がわざわざ研究所の概要のみならず展示物についても丁寧に解説して下さり、地学があまり得意でない僕でも展示物についてしっかりと理解することができた。神奈川県温泉地学研究所で特に心に残ったのは、神奈川県の地震をリアルタイムに調べている部屋の壁に「信頼・使命・責任」と書かれた紙が貼ってあったことだ。温泉などを管理すると同時に地震や火山の噴火といった自然災害も管理するものとして安全を守るといった力強い思いが感じられた。

本当は、⑥の行程として、関東ローム層の露頭観察を計画していたのですが、時間が足りなくなってしまい見られなくなったことは運営側の反省です。ただ、バスの車内からたまたま大規模に関東ローム層が露出している工事現場を見ることができたのはせめてもの救いとなりました。
全体を通して天気にも恵まれ、無事に終えることができました。生徒感想を見ても、有意義な時間をすごすことができたようで何よりです。もう少し見てみたいな、これについてもっと詳しく知りたいな、と思った生徒は、ぜひまた別の機会を探して積極的に野外に出ていってほしいと思います。このあと、それぞれにテーマを設定してレポートを書いてもらうことになっていますが、そちらも楽しみにしています。